2017年1月27日金曜日

【ロッド】東レの新素材ナノアロイって何?あれこれウンチク

ここ数年,とくにここ一年ぐらい,釣り業界において,東レのナノアロイという「新素材」の名前を釣業界界隈で耳にするようになりました.

出典:http://nanoalloy.toray/licence/lic_003.html

ナノアロイを開発した東レ社のHPにも特設ページが作られているほどです.
http://nanoalloy.toray/

ってもう私のブログ記事を読むまでもなく,上のサイトを見ればよいのでは?
はい,まったくその通りです.なので以下は適当に思ったことを書き殴ろうと思います.

ナノアロイ自体の技術としては10年ぐらい前に確立されていてウェブなどでも見たことがあったように思うのですが,商品化に至るまでそれだけ年月がかかるということなのでしょう.

しかし,釣業界で名前をきくようになったのはここ最近.
何故か?釣り竿の原料となるプリプレグ,これにナノアロイが応用された製品が開発されたのが最近だから.ということになります.

ナノアロイはポリマーのことであり,カーボン繊維のことではないです.

なので,ナノアロイの適応範囲は何も釣竿をはじめとしたカーボン繊維に限られることではないのです.
カーボンロッドは元となるプリプレグ(炭素繊維に樹脂を含浸させたシート上のもの※TORAY社のHP説明より引用)から作られます.
このプリプレグ中のマトリックス樹脂にナノアロイ技術を適応したプレプリグによって製造されるロッドをナノアロイを採用したロッドと呼ばれます.

素材の開発って難しそうですよね.
釣り竿の素材であれば,深刻な人命に関わるようなこともさほど起きませんが,カーボン繊維は今や航空機の胴体や翼にまで使われている構造用材料です.
飛行機が素材のせいで落ちたりしたら・・・相当深刻な問題になると思います.

ということで,10年という年月も致し方ないのかなと思います.

で,ナノアロイナノアロイ言ってるけど,ぶっちゃけなに?
って話ですが,HPによる定義としては
”複数のポリマーをナノメートルオーダーで混合したポリマーアロイ構造を形成させる技術.”とと書いてあります.

少しだけ専門的な話は以下のウェブページから見ることが出来ます.

ナノアロイ®による新素材の創出

そもそも,アロイというのは英語の綴りをAlloyと書き,「合金」という意味です.
超合金とかの「合金」ですが,この「合金」の定義は難しいところでありますが,基本的には原子レベルで混じり合った金属の様相を呈するものだと思います.混ざるものは金属でなくとも合金といいます.たとえば,みなさんの身近にある「鋼」シマノのHAGANEコンセプトの由来にもなっていますね.「鋼」とは本来,「鉄」という金属と「炭素」という非金属元素の合金です.
原子レベルでの混じり合いが合金だと言いましたが,共晶などはもうすこし大きいオーダーでの混じり合いとなります.

ちなみに,かなり大きなオーダーで異種材料を複合したような材料は「複合材料」といいます.FRPとかCFRPとか,鉄筋コンクリートとかそういう材料です.カーボンロッドも樹脂と炭素繊維の複合材料と言えます.

っと,話が逸れ過ぎました.
あくまでナノアロイというのはRマークが付いている通り,「商標」なので,ナノでもアロイでもなくても名前はつけることが出来ます.

で,もう一度,ナノアロイってぶっちゃけなに?って話です.
複数のポリマーをナノメートルオーダーで混合したポリマーアロイ構造を形成させる技術.と書きましたが,これを言い換えると,
ナノアロイは2種類以上の樹脂をナノオーダーで相分離させたポリマー:ポリマーの複合材料とも言えます.

そもそもなぜ2種類以上必要なのか?という話ですが,この考え方は複合材料と同じです.
たとえば,片方は非常に柔軟で耐衝撃性に優れる材料Aがあり,もう片方にものすごく強度はあるが,脆い材料Bがあるとします.Aは柔軟であるがゆえ,強度がなくて使えません,Bは強度があるが,耐衝撃性がなくて使えません.我々が欲しいのはAとBの中間の性質の材料だ!とします.
そこで,ならAとBを組み合わせちゃえばいいじゃん?
という考え方です.
もちろん,A+Bという材料と同じような特性をだせる単一の材料Cを開発するという方策もありなのですが,AとBがあるからそれを活かしましょう!ということだと思います.

で,ナノレベルオーダーで分散させたら何がいいの?って話ですが,結果だけ言えば,ナノレベルより大きいオーダーで分散させるより,耐衝撃性の向上や破壊強度の向上が挙げられます.
なぜこのような性質が発現するか?については,まだまだ研究段階であるように思います.
基本的にはゴロゴロとたとえばマイクロメートルオーダーで分散させた場合,どこかにかならず偏析やサイズの大きなものが存在していたりして,そういうところに応力が集中して破壊に至る,もしくは局所的な弱い部分が出来てしまうという可能性が高くなりますが,ナノメートルオーダーで分散されている場合にはある意味で物質が均一となるため,このようなことが起こるのだと予想されます.

で,この技術が採用されたロッド達が例えば以下のような製品

APIA
Foojin’AD(風神AD)
Foojin’BB(風神BB)

宇崎日新
ZEROSUM 磯 弾 V3

オリムピック
カラマレッティー プロトタイプ Due

がまかつ
がま磯 インテッサG-Ⅴ
LUXXE OLTRE

ClearBlue
Crystar-57

ダイワ
銀影競技メガトルク大鮎

メジャークラフト
NANOACE

ヤマガブランクス
Blue Current TZ NANO
Ripple Fisher "NANO" Series

FCL labo
UC10pro (最新バージョン
UCB81EXT MH (最新バージョン
など

パームス
メタルウィッチクエスト

シマノ
ポイズンアルティマ(グリップ部
オシアプラッガーフルスロットル

コレ以外にも現在では多数の製品があります!


プリプレグを変えるだけですから,新技術が必要なわけではないので,これからもどんどん増えると思います!

東レの現在のプリプレグラインナップは下記ページにあり,
http://www.torayca.com/lineup/product/pro_003_01.html

注目するとこは「樹脂」です.
これが#2573と#2574がナノアロイ樹脂になります.
2573は耐衝撃用,2574は高圧縮用なので,釣り竿としては基本的には2574が使われると思います.
上記URLを参照すると,2574が使われるプリプレグは今のところ1種類,T1100GCシリーズのみです.33トンカーボンですね.
周りの製品と見比べても,引張強度の高さが伺えます.

釣り竿製品までに加工した場合,従来の釣り竿とくらべて,同じマンドレルで焼いて約20%〜30%の強度向上があるとFCLの津留崎さんは述べられていました.

これから他のプリプレグにもナノアロイが使われていけば,幅広い弾性率でナノアロイが使用ができるようになり,色々なロッドが出てきそうですね.
※一部では既に幅広い範囲のトン数にてナノアロイを使用したプリプレグが出回っているという記事を見ましたが・・・真偽の程は私には分かりません.

カーボンロッドは面白いもので,トン数の高いカーボンを使えば,パキパキに仕上がる「傾向」にありますが,ただそれだけではないというような感じです.
一般的には弾性率の高い材料を使うと,それだけ体積が抑えられるので,軽く仕上がります.故にキャスティングにおいてはティップの収束がはやかったり,色々とメリットが生まれます.ロッドに関するウンチクはまた今度にでも.

工業製品において様々な技術ってあると思うんですが,素材の進歩は製品のパフォーマンスに直結するので,個人的には非常に重要だなと思っています.
これは竿だけではないです.例えば車だってボディは先に述べた鉄(鋼)で出来ています.革新的な材料ができれば車はもっと軽量化できるはずで,低燃費化や衝突安全性が確保されるはずです.

我々はどうしてもユーザーなので製品を作っている会社ばかりに目が行きがちですが,縁の下でさせてくれているような素材メーカーも応援したいなと思いました.

ま,あとはナノアロイってなんのことかイマイチ分かってなかったよって人が,あーいちおう,そういう代物なのね?と分かっていただければいいかなと思いました.

でわ.

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